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はじめに

 わが国の都市整備は、戦後の急速な都市化の進展の中で、経済性、効率性、機能性が重視されてきたが、近年、美しい街並みなど良好な景観に関する国民の関心が高まるとともに、個性豊かな都市景観の形成が求められている。
 
 このような背景のもと、平成16年6月には我が国初めての景観に関する総合的な法律である「景観法」が制定され、また、良好な景観の形成とこれによる観光立国の推進にも資する事業等を推進するため、景観形成事業推進費が平成16年度に創設されたところである。今後、公共事業の実施においては、行政内部での検討のほか、住民への説明や合意形成の過程において、将来の景観を予測・分析していくことがますます重要となると考えられる。
 
 景観の予測に関しては、従来は模型やイメージパースといった手法が中心的に使われてきたものの、近年ではコンピュータ・グラフィックスを活用した画像システムにより、これを表現する手法が開発され、土木構造物や施設建築物等の単体の施設設計を中心に、その活用が進んでいる。また、地方公共団体においては、行政区域に係る各種情報を電子情報としての地図データの上に展開するGIS(地理情報システム)の導入が進められつつあり、このような行政の電子化の動きに合わせ、景観検討についても、今後一層の電子的技術の導入が進むものと考えられる。
 
 一方これらの技術は、開発、実用化されて日が浅く、また日々進歩しているものであることから、体系的、具体的にこれを把握、理解することが困難な状況にある。また、これら技術の活用にあたって行政ニーズが多種多様なこともあり、導入したものの期待する程の成果が得られなかった等の声も聞かれる。
 
 このような状況を踏まえ、また、景観情報技術の将来性に着目し、現時点における景観情報技術の実態や活用方法について取りまとめたものである。今後、景観行政の実務担当者が、景観に関するニーズをより的確に景観情報技術の作業者に伝え、目的や場面に応じた技術活用と検討が行われることを期待するものである。
 
 手引きの作成にあたっては、倉田直道工学院大学教授を座長とする検討会を設置し、景観情報技術の活用方法について整理した。委員、オブザーバー各位並びにアンケートにご協力いただいた地方公共団体の方々等のご協力に心より感謝するものである。
 
 平成17年10月
国土交通省都市・地域整備局都市計画課
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